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膝関節のはなし/主な病気

膝関節のはなし

膝関節

膝関節c 膝関節は、大腿骨と脛骨(けいこつ=すねの骨)、そして膝蓋骨(しつがいこつ=膝の皿)で構成されています。脛骨の外側には腓骨(ひこつ)が骨が寄り添うように存在します。

関節部分の脛骨はほぼ平らな形をしています。その上を、凸状の大腿骨が転がりすべるようにして動きます。
平らな板の上を丸いボールが転がるところを想像すると、それはとても不安定であることがわかります。そこで、膝の関節を安定させるために、骨と骨をつなぐじん帯[?]が重要な役割を果たします。

膝関節正面改訂c 関節の中では、骨の表面はなめらかな軟骨[?]でおおわれ、そのすき間には半月板(はんげつばん)[?]があります。関節部分は関節包でおおわれています。その内側の滑膜(かつまく)[?]は潤滑油の役割をする関節液[?]を分泌します。
軟骨、半月板、そして関節液のはたらきによって、膝関節は非常になめらかに動くようになっています。

膝の曲がる角度は、最大で約150度です。これは正座をするときの角度です。しゃがむ時には約120度曲がります。歩くときには約60度曲がります。

膝関節の主な病気と症状

膝関節の主な病気

変形性膝関節症

長い年月をかけて、軟骨[?]にひびが入ったりすり減ってしまい、その結果、痛みや炎症をおこした状態です。軟骨がすり減ると、衝撃を吸収する力が弱まり、すり減った部分の骨により多くの負担が集中します。
進行すると、骨同士がこすれあって表面がデコボコになったり、くぼみができたり、骨棘(こつきょく)(骨が増殖して棘状になること)ができます。そしてさらに痛みが増します。また、関節包の内側にある滑膜が厚くなって異常な関節液が分泌されて、いわゆる「膝に水がたまる」状態になり、腫れや痛みが増強したり動きが悪くなることもあります。
加齢、膝に負担のかかる運動や仕事、太りすぎ、下肢の筋力低下、内反膝(O脚)外反膝(X脚)などの膝の変形などは、関節により多くの負担がかかり、進行が早まることがあります。

変形性ひざ関節症進行 背景ありc2

関節リウマチ

関節リウマチは、関節に炎症(関節炎)がおこり、腫れて痛む病気です。男女比1対4の割合で女性に多い疾患です。30~50歳前後の発症がもっとも多く、若者から高齢者全般におよびます。原因はまだ明らかにされていませんが、自己免疫疾患[?]のひとつと考えられています。
関節をおおっている関節包の内側にある滑膜[?]が徐々に破壊されていきます。関節炎は手足の指の関節に痛みや腫れをともない、やがて肘や膝、肩、股関節などの関節に広がっていきます。

膝関節に炎症がおきると、膝が腫れてこわばる感じがします。骨びらん(骨がくずれること)がおこり、徐々に炎症が軟骨に広がって軟骨が薄くなり、骨同士がこすれあうにつれて痛みを感じるようになります。さらに症状が進むと、ひどい場合には大腿骨と脛骨(すねの骨)がつぶれて一体となり、膝関節がまったく動かなくなることもあります。これを骨癒合(こつゆごう)といいます。

リウマチひざ変形改訂

治療としては、抗リウマチ薬やステロイド剤、痛み止めの薬などの薬物療法や、リハビリテーションなどの運動療法をおこないます。近年では、生物製剤も使用されています。関節の破壊が進行すると人工膝関節全置換術などの手術療法の適応となります。

リウマチ21.infoのホームページ

外傷性関節炎

ひどい転び方をしたり、膝を打ったりすると関節をいためることがあります。この外傷(けが)がきちんと治らないと、年月とともに軟骨がすり切れてしまうことがあります。
また、大腿骨や脛骨(すねの骨)が骨折した後に、変形を残したまま治ってしまった場合などにも、膝の痛みや変形の原因になります。これを外傷性関節炎といいます。

膝関節の症状

膝の痛み [更新済み] 主な症状は、痛みと動きが悪くなることです。
そのために、長く歩けない、階段の昇り降りが困難、しゃがめないなど、日常生活にさまざまな支障をきたします。

膝関節の痛み

初期の場合は、膝に体重をかけて動くと痛みが出現し、横になったり椅子に腰かけて休むと痛みが改善します。動き始める時に痛むのも特徴の一つです。また、痛みの他にも、膝がだるい、ガクッとする、グラグラしてたよりないなどの違和感をおぼえることもあります。
進行すると、休んでいる時でも痛むようになり、膝の曲げ伸ばしがつらくなります。

膝関節の動きが悪い

朝起きた時に膝がこわばるように感じることがあります。これは寝ている時に膝関節を動かさないでいるために、関節がかたまってしまうことが原因です。こわばりが続くのは15分~30分で、少しずつ動かしていくうちに改善します。
症状が進行していくと、曲げ伸ばしが円滑にできなくなったり、動かす時に膝がきしむこともあります。そしてしだいに動きの範囲が狭くなっていきます。曲がりが90度以下になると、階段を昇ったりしゃがんだりすることが難しくなります。

膝が変形する

もともとO脚(内反膝)などの膝関節の変形があると、関節にかかる負担がより多くなり、変形が進んで症状がさらに悪化しやすくなります。さらに、変形によって膝のじん帯[?]がゆるんだり緊張したりして、じん帯そのものにも痛みが出てくることもあります。じん帯がゆるむと関節の安定性も悪くなります。

両足変形膝 背景ありc2

この情報サイトの内容は、整形外科専門医の監修を受けておりますが、患者さんの状態は個人により異なります。
詳しくは、医療機関で受診して、主治医にご相談下さい。

じん帯(たい)
じん帯(たい)は骨と骨をつないでいます。
膝(ひざ)関節には、側副(そくふ)くじん帯(たい)(外側・内側) 前十字(ぜんじゅうじ)じん帯(たい)、後十字(こうじゅうじ)じん帯(たい)、膝蓋腱(しつがいけん)があり、関節を安定させています。側副(そくふく)じん帯は左右に関節がずれないように、前十字(ぜんじゅうじ)じん帯と後十字(こうじゅうじ)じん帯は前後に関節がずれないようにはたらきます。
膝(ひざ)関節の軟骨がすり減ると、関節のすき間がなくなってきます。すると、その分じん帯にゆるみが出て、関節の安定性が悪くなります。また、O脚(おーきゃく)などの変形があると、側副(そくふく)じん帯のうち片側だけが緊張して負担がかかり、じん帯そのものが痛むようになることもあります。 01_img06
関節軟骨(かんせつなんこつ)
関節軟骨(かんせつなんこつ)は、関節の骨の表面をおおっている厚さ2~7mm程度の層です。
軟骨細胞とその他の成分(繊維成分であるコラーゲン繊維や、ゲル状の物質プロテオグリカンなど)からなっていて、水分量が多いのが特徴です。 関節にかかる体重を吸収して、関節の動きをなめらかにします。
血管、リンパ管、神経が通っていないため、いったん傷つくとなかなか回復しないと言われています。
滑膜(かつまく)
関節包(かんせつほう)の内側の関節にもっとも近いところにある膜です。関節液(かんせつえき)を生産して関節内に送り込み、古くなった関節液を再び吸収して取りのぞきます。
関節リウマチなどによって滑膜(かつまく)に炎症がおこると、膜が肥厚(厚くなる)したり増殖して、正常に機能しなくなり、さらに、炎症が続いて滑膜(かつまく)の増殖が進むと、徐々に軟骨や骨を破壊していきます。
分泌する関節液(かんせつえき)は粘調度(ねんちょうど)(ねばりの度合い)が低くなり量も増えます。粘調度の低い関節液(かんせつえき)は、潤滑油(じゅんかつゆ)としての役割が十分におこなえなくなります。また、古くなった関節液(かんせつえき)の吸収が追いつかず、関節内に大量の液体が充満して、関節水腫(かんせつすいしゅ)(いわゆる「水が貯まる」状態)を引き起こし、関節の腫れや痛みを増強する原因になります。
半月板(はんげつばん)
線維状の軟骨(なんこつ)とコラーゲンからなり、膝(ひざ)関節にかかる衝撃をやわらげ、関節の動きをよくするはたらきがあります。滑膜(かつまく)から分泌される関節液(かんせつえき)から栄養を受けています。

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関節液(かんせつえき)
粘調度の高いヒアルロン酸とコンドロイチン硫酸という物質が主な成分です。
滑膜(かつまく)から分泌されて、古くなると再び滑膜(かつまく)から吸収されます。関節内にある関節液の量は関節によって違いますが、正常な膝(ひざ)関節では数mlです。関節に炎症がおこると、粘調度の低い関節液が多量に分泌され、滑膜(かつまく)からの吸収が追いつかなくなります。ひどい場合には関節内の液が30ml程度以上になり、いわゆる「水が貯まった」状態になります。関節の痛みや腫れを増強させる原因になります。
関節液の検査では、その中にある細胞数の増加を知ることで、原因となる疾患の診断をする目安になります。
自己免疫疾患(じこめんえきしっかん)
人体に細菌やウイルスなどの異物が入ってくると、体の中では、その異物に対して攻撃し排除しようとする反応がおきます。これを免疫(めんえき)反応といいます。
この反応が正常に機能していると、異物と自分の細胞をきちんと見分け、異物のみを選んで攻撃することができます。しかし、免疫機能に問題が生じると、異物と自分の細胞との区別がつかずに、自分の細胞、つまり自分自身を攻撃してしまうことがあります。このように自分自身を攻撃してしまうことで、様々な病気を引き起こす病気を総称して自己免疫疾患(じこめんえきしっかん)と呼んでいます。