国家公務員共済組合連合会 横浜南共済病院
整形外科 人工関節センター長 柁原 俊久 先生
人工関節にすると痛みは取れますか?とよく患者さんに聞かれますが、人工股関節にすると、どの年代の方でも痛みがなくなることが多く、とても喜ばれます。特に脚長差がある方は、痛みが取れるだけでなく跛行(はこう)も治り、バランスの良い歩き方ができるようになるため患者さんの満足度も高いようです。多くの方から、「もっと早く人工関節にすればよかった」といわれます。始めは車椅子で来院していた人が、痛みがとれて自分の脚で歩けるようになるといろいろなことに挑戦してみたいと積極的になられるようで、表情も明るく元気になります。
この様な症状が出たら手術を受けた方が良いという目安は、じっとしていても股関節が痛い、寝ていても股関節が疼く、痛くて買い物にも行けない、長い時間歩けないから外出が億劫だ―このように日常生活に支障が出ている状態は重症といえます。体重をかけると股関節が痛くなるからと歩行することをギブアップしてしまうと、骨はどんどん脆くなってしまいます。日光に当たる機会が少なくなれば骨粗しょう症の危険も高くなりますし、動かないから体重は増えてしまうなど、更に状況は悪化することでしょう。このような悪循環に陥るのを防ぐためにも、痛みが続くようであれば、人工関節を考えたほうがいいと思います。
人工股関節置換術を行うことができないケースは、それほど多くありません。実際、高齢になると、大抵、他の疾患を持っています。人工股関節置換術を行う前に検査をしたら、心臓に異常が見つかった人もいました。その方は、まず心臓の手術を行い、1年後に股関節の手術をしました。糖尿病の人でも、血糖のコントロールができていれば大丈夫です。きちんと全身の状態を確認した上で判断しますので、初めからあきらめないで相談してください。
人工股関節の手術を受けるために、痛みを我慢しながら65歳まで待たなくてもいいと思います。股関節の痛みのために日常生活に支障が出て、何かを諦めなければならないとしたら、それはとても残念なことです。人工股関節は、痛みを取るだけでなくバランスのいい歩き方ができるなど、患者さんの社会復帰,社会復帰を可能にします。普通の日常生活を難なく送ることができるようにするのが、人工関節置換術の目的といえるでしょう。 痛みで活動が制限され生活の質が低下してしまう前に、まずは股関節が専門の整形外科医に相談をして、適切な診断を受けてください。そして症状が進行する前に、タイミングを逃さず、適切な治療を受けることが重要と考えています。