あさひ総合病院 整形外科 中藤 真一
先頃の発表では、日本は香港に抜かれましたが、世界第2位の長寿国です。その平均寿命は男性で79.44歳、女性85.90歳となっております。しかしながら、健康寿命(介護を受けたり病気で寝たきりになったりせず、自立して健康に生活できる期間)をみてみると、男性で70.42歳、女性73.62歳となっています。すなわち、男女とも10年近く介護が必要であったり、寝たきりになっている計算になります。その原因の中には変形性関節症による疼痛も含まれています。特に、膝や股関節の疼痛は健康寿命を下げてしまいます。
近年のこの変形性関節症克服のための人工関節置換術が発達してきました。以前と違い手術の侵襲を小さくする工夫もなされるようになり、皮膚切開が小さくなったり、手術中なるべく筋肉を痛めないようにして術後の下肢の機能を残す手術法も開発されてきました。そのため、私のいるあさひ総合病院では高齢者の方にもこの手術を受けていただくことができるようになってきました。
あさひ総合病院がある富山県朝日町は富山県でも一番高齢化が進んでいる町で、65歳以上の高齢化率は35%を超えています。女性においては高齢化率が40%に迫っています。しかし、そんな町にあって高齢者の方々はとっても元気です。私の外来に来られる患者さんも皆一様に表情が明るく、80歳を過ぎてもパークゴルフや農業といった屋外活動に励んでいらっしゃいます。そういった方々の関節痛の悩みをとって差し上げるのが私の仕事です。その手段の一つとして人工関節置換術を行っています。当院での人工関節置換術を受けられる患者さんの平均年齢は78歳です。昨年は91歳、今年は90歳の女性の方にも人工膝関節置換術を行いました。91歳の方は一人暮らしをなさっており、人工膝関節置換術を受けられてからは、膝の痛みがなくなって、買い物も自分で行けるようになり屋外での活動が増えたと大変満足していただいております。
厚生労働省は、健康寿命を延ばそうという目標を掲げております。その目標を達成する一つの手段として、人工関節置換術は大変優れた方法といえるでしょう。
お知らせ:2012年11月17日(土)に中藤先生の市民健康講座が開催されます。
詳しくはこちら⇒2012/11/17 黒部市で膝関節の市民講座が開催されます。