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人工股関節の手術を受けるタイミングについて

整形外科 診療講師 萩原 茂生 千葉大学医学部附属病院

千葉大学医学部附属病院 整形外科

診療講師 萩原 茂生 先生

   

年齢と共に膝関節や股関節に痛みを感じる患者さんが増えてきます。痛みを感じながらの生活に不自由を感じる方は、まず整形外科のクリニックを受診されることが多いと思いますが、痛み止めの内服やリハビリテーションを続ける中で「この治療はいつまで続けるのだろう。手術を考えた方がいいのかな。」と思われる方もいらっしゃいます。手術を受けるのかどうかは、具体的にはどのように決めたら良いのでしょうか。

私は基本的に外来で初めて診察する患者さんには、まずは運動療法を中心としたリハビリテーションをお勧めしています。関節変形が初期の方であればかなりの症状改善が見込まれますし、軟骨が擦り切れてしまうほどに進行した方でも、痛みがある程度軽減することが期待できるからです。「軟骨がすり減る」=「手術が必要」という訳ではありません。日本整形外科学会の変形性股関節症診療ガイドラインにおいても、疼痛の緩和や機能改善に有用であるとして推奨されています。

その一方で症状が進行した患者さんの中には運動療法のみでは取りきれない痛みが残存することもあります。症状改善の目安として2-3ヶ月程度の運動療法を行い、それでも残った症状についてはその痛みを抱えながらの生活が受け入れられるかが判断のポイントになります。「仕事を頑張りすぎた日は痛いけど普段は大丈夫」ということであれば、日常生活の工夫である程度対応ができるかもしれませんし、「安静にしていても痛くて立ち上がるのは辛い、痛みのせいで趣味などは諦めて外出の頻度も減っている」という生活が続くことは全身の体力や精神面にもよくありません。変形した股関節の痛みを改善するために確実な効果を期待できるのは手術治療となります。

最近では体への負担が少ない手術方法が発達し、麻酔技術の向上により術後の痛みも軽減しています。それに伴い入院期間も短くなり、手術で筋肉をあまり傷めないため、術後に可能な活動も増えています。術後の患者さんからはダンスやゴルフ、畑仕事や旅行などを再開できたという話を伺うことも多く、日々の痛みから解放されるメリットは非常に大きいと感じています。

股関節の治療を受けていても痛みが続いてお困りの患者さんは、主治医の先生とよく相談し、一度専門医の診断を受けてみることをお勧めします。

手術の様子